職員室の声

平成29年度 修了式(神田)

2018-03-20

 皆さん、おはようございます。大掃除、大変ご苦労様でした。

 

 さて、いよいよ本日で平成29年度が終了することになりますが、今年度も、各種 学校行事を始め、様々な分野で皆さんの活躍や頑張りが見られた年であったと思います。4月以降も、あらゆることに主体的・積極的に、そして前向きに取り組む姿勢を 大事にしていってもらいたいと思います。

 

 

 また、大学入試の結果もほぼ出そろってきましたが、今年の高校3年生もよく健闘 してくれ、いい結果を残してくれています。これからまだ国公立大学の後期試験の結果も出てきますので、さらに合格者の数は増えると思いますが、最終的な今年度の結 果については、事務室前の掲示板に随時、張り出されていきますので、それを見てもらいたいと思います。

 

 いずれにしろ、受験までの道のりは遠く、途中、辛くて逃げ出したいような時もあったはずですが、それを我慢して乗り越えた先に合格という二文字が待っていたのですから目標の大学に合格した人の喜びは大きかったと思います。「冬の厳しさに耐えた者ほど、春の暖かさを感じる」という言葉がありますが、君たちも中学や高校に入学した当時の初心を思い出し、是非、自分の夢を達成するために「努力するための努力」をしてもらいたいと思います。

 

 

 ところで、校長代理として、皆さんにこういう形で語る最後の機会となりました。 これまでいろいろなことを話してきましたが、今日は「人への優しさ」ということに ついて話をしたいと思います。

 

 

 皆さんは、第一中学・高校入学以来、いろいろなことを学んできています。それは、 決して勉強や部活動に限ったことではありません。それらのことも通して、最終的に は、社会に出ても通用する誠実にして、心温かい人間になることを学んできているはずなのです。皆さんが中学校、或いは高校に入学し立ての頃、私は君たちに向けて 「できる人」であると同時に「できた人」になってもらいたいということを話してき ました。つまり、勉強が「できるだけの人」ではなく、人の痛みが分かる「できた人 間」になってほしいということでした。言葉を換えれば、感性豊かな人間になっても らいたいということでもあったのです。

 

 

 シナリオライターの倉本聰さんという人のエッセーに、人間と馬の交流を描いた短 い物語があります。

 

 北海道では、かつて農業に活躍した馬が沢山いました。俗に「道産子」と呼ばれる 馬のことです。しかし、その馬はトラクターなど、農業機械の普及で急速にその役目 を失っていきます。その時期の、馬と飼い主の物語です。飼い主の名前は「ヒラさん」 と言います。ヒラさん一家は、長年連れ添ってきた馬を手放す気になれないまま長い 年月が経ってしまいました。その馬を家族の一員として、深く愛していたからです。 しかし、その馬に寿命が近づて来たのです。愛する馬の死を見るに忍びないという家 族の意見で、馬はとうとう売られることになりました。その時の話です。これからそ の部分を原文のまま紹介します。

 

 

 「馬を手放すその前日に、家族は馬にご馳走したらしい。そのご馳走が馬に悟らせ た。翌朝、トラックが馬を迎えに来、主が馬を小屋から引き出すと、突然、馬は敷居 口で止まり、主の肩に頬をすり寄せた。家族はハッとしたそうである。馬が涙を流し ていた。大粒の涙を流したのだという。ヒラさん一家は動けなかった。全員、胸憑か れ、化石のようになっていた。すると、突然馬は歩き出し、もう後も見ず、踏み板を 渡ってトラックの荷台へ上がっていったという。この話に僕は胸を突かれる。馬と、 人間と、その双方にである」という話です。

 

 

 馬が涙を流して泣くのはおかしいという人がいるかもしれません。そんなことは信 じられないという人もいるかもしれません。しかし、ヒラさん一家の人たちには、確かに馬の涙が見えたのです。馬の悲しみが伝わってきたのです。

 

  その涙が見える人と、見えない人がいるのだと私は思います。人の悲しみを自分の 悲しみにできる人と、できない人がいるのです。鹿児島第一中学校・高校の教育は、 言うまでもなく、前者(人の悲しみを自分の悲しみにできる人)を求めてやまない教 育です。豊かな感性を育てていく教育です。近年、パソコンやスマホなど情報機器の 発達によって、人と人との間がサッパリしすぎてきたせいか、なかなか心が通じ合え ないもどかしさを多くの人が感じているような気がしているところですが、このよう な時代だからこそ、お互いを思いやる優しさを忘れないようにしたいものです。

 

 

 イギリスの探偵小説家チャンドラーは、主人公の私立探偵フィリップ・マローに次 のような言葉を語らせています。

 

「強くなければ生きていられない。優しくなければ、生きている資格がない」

 

という言葉です。どうか残りの学園生活の中で「できる人」であると同時に「できた人」 となれるよう、これまで以上に人間関係も大切にしながら、一日一日を充実させて過 ごしてもらいたいと思います。

 

 

 まもなく新入生も入学してきますが、春休み中も事故などに遭わないように気をつけて、気持ちも新たに新年度を迎え、後輩達にも、人間味溢れる先輩として接してい ってもらえたらと思います。

 

 

(校長代理 神田 芳文)